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2010年全国大会実施報告

2010年 全国大会実施報告書 [3.45 MB]PDF


基調講演

テーマ:地球時代の住まいづくり〜豊さを実感できる住まい・住環境〜
講師 : 東京大学名誉教授・工学博士 月尾 嘉男氏


月尾 嘉男 氏

地球は平均気温15度で豊富な水にも恵まれ「奇跡の惑星」と言われるが、その素晴らしい地球に環境問題が出現している。原因は人間が登場したことで、地球には数千万種の生物が棲息しているが、そのわずか1種にしかすぎない人間が環境問題を引き起こしている。
1万年前の地球の人口は推定500〜600万人であったが、現在では1000倍にも増え、さらに1万年前は自分の身体を維持する2500キロカロリーだけで生活していたが、現在、世界平均では100倍にあたる25万キロカロリーを一人が一日に使っている。掛算すると10万倍に増え、これが環境問題の基本的な原因である。
簡単な解決方法は人口が減ることだが、これはできない。そこで使うエネルギーや資源を減らすことが唯一の手段となる。人間は自然を収奪して増加してきたが、そのまま収奪し続けることができれば問題はない。しかし、間もなく、ほとんどの資源が収奪できない状況になる。現代文明を維持している鉱物資源の多くは100年以内に枯渇する。森林も、現在の勢いで伐採していけば、500年程度で消滅する。湿原も地球にとって重要な自然だが、急速に消滅し、北海道の湿原は過去80年間で6割も減少した。こうした開発の影響で生物も絶滅してき、哺乳類の20%、魚の4%が絶滅危惧種に指定されている。
生命にとって、とりわけ重要な資源は水であるが、世界各地で濫用されている。サウジアラビアでは1年間の降水量の約6倍の水を地下から汲み出しており、間もなく枯渇する状況になりつつある。世界では人口の18%、約12〜13億人が安全な水を飲むことができない状態である。
これら資源の枯渇と並ぶ重要な環境問題が地球温暖化である。1600年から現在までの400年間に気温は1.2度近く上がり、結果として氷河が後退し、気象災害が増大し、一部の海面も上昇している。海面上昇は有り得ないことではなく、6000年ほど前の縄文海進の時代には、日本周辺の海面は5mほど上昇し、関東平野の大半が海面下であった。
このような環境問題を集約したエコロジカル・フットプリントという数字がある。人間は食料を作るために森林を伐採し、水面を埋立て、油田、炭田、森林などから資源を取るために開発をし、生活するために都市を造り、道路を造るなど、自然を破壊してきた。その面積を一人あたりで計算した数字であるが、それによると人間は地球が養うことのできる人口以上に増加し、現在5億人とも10億人といわれる人が飢餓状態にあり、毎年1000万人近い人が餓死し、安全ではない水を飲んで数100万人の人が死ぬという事態になっている。
この解決が今日のテーマになる。そのために現在の環境問題を引き起こしている社会の構造を考えてみる。1950年から2005年までの55年間に人口は2.5倍に増えているが、穀物は3.2倍、食肉は6倍、漁獲は6.9倍、自動車生産は5.7倍も増加した。経済の視点から見れば世界は豊かになったが、そのために鉄、アルミニウム、石油、天然ガスなどの資源を人口増加以上に消費してきた。その結果、二酸化炭素の排出量が4倍以上に増え、大気温度が6%上がるという結果になった。
この方向を転換しなければいけない。簡単な方法は生活水準を低下させることである。自動車は使わずに自転車に乗り、夏は冷房なし、冬は暖房なしの生活をすれば環境問題解決の方向に向かう。しかし、この転換は実施できないので、生活水準を向上させながらエネルギーや資源消費を減らすという持続可能な道を探すことが唯一の解決への方向転換になる。


 

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月尾 嘉男(つきお・よしお) 氏 略歴

(東京大学名誉教授、工学博士)

写真:月尾嘉男氏

  • 1942年愛知県生まれ。1965年東京大学工学部卒業。1971年東京大学工学系大学院博士課程修了。1978年工学博士。名古屋大学工学部教授、東京大学工学部教授、東京大学大学院新領域創成科学研究科教授などをへて、2002-03年総務省総務審議官。2003年より東京大学名誉教授。
  • 2004年2月カヤックでケープホーンを周回する。専門はメディア制作。
  • 著書は『IT革命のカラクリ』『縮小文明の展望』など。
  • 趣味はカヤック、クロスカントリースキー、登山。

 

 

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